4月15日(晴れ) 5時起床
今週の予定をたてながら対策を練る。
僕にとって最大の問題は、42番札所仏木寺をどう過ぎるかだった。
事前調べでも、ここの寺を超える峠にある東屋と峠を下った東屋では
必ず出ると調べはついていた。
金平さんの所で、先達の教わった情報でも、仏木さんだけは避けて
下さい。と言われていた。
恐ろしや恐ろしや、仏木寺。
ここは、自殺者が野宿お遍路の前に必ず姿を現すと超有名なお寺だ!
距離の計算では、峠越えをして43番まで行くには中途半端。
逆算する。
今日と明日は、30キロずつ歩けば仏木寺の「前」にある東屋に止まればいい。
先達が、お寺の前の東屋なら大丈夫と太鼓判を押してくれたからだ。
峠と峠越えだけは泊まらないようにと。
「よし。完璧だ」
6時半出立。
今日は足が痛くない。お風呂のおかげかな?
昨日の40キロ越えは僕に大きな自信を抱かせてくれる。
ランラランのラン。
歩くマシーンの出来上がりか。
なんてこと無い。いくらでも歩ける。
3時間後、40番観自在寺到着。
そしてすぐに出立。愛媛に入ってやっと海が見えてくる。
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この辺りも海が綺麗だ。
暫く歩き海沿いに喫茶店発見。
今日もちょっとだけ贅沢しよう。
「大豆黒豆のコーヒー」の看板が気になって入ることに決めた。
定食を食べ、黒豆コーヒーの説明を読んでみる。
「そうか、世の中健康ブーム。コーヒーもこんなものが受けるんだ」
確かにお客さんは一杯である。
僕も、お客さんにこの手のコーヒーを出そうかなぁ。
お遍路から帰ったら、サービスも向上しないとな。 |
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と思惑も広がる。
お店を出て、向こうからお遍路さんが歩いて来た。
逆打ちだ。
逆打ちとは、88番札所からスタートし1番札所を目指す。
標識や看板や地図など、1番からスタートするよりはるかに難しい。
ご利益も何倍とあるお遍路だ!
僕もここまで、何人かとすれ違って来た。
「いつかは僕も」
そんな事を考えながら歩く。
3時間ほど歩くと、前方にゆっくり歩くお遍路さん発見。
荷物が半端ではない。
20キロ・・・25キロはあろうか。凄い。
追い越し際に顔を見た。かなりのおじいちゃんだ。
「お先に」
夕方うどん屋さんを見つけ、夕食。
この辺りはスーパーが無い。仕方ない。
4時嵐坂公園到着。
一服だ。休憩。
「どうしようかなぁー」
ここは東屋もしっかりしてるし、水道もあるし、野宿しようか
もう少し先に進もうか、思案のしどころだ。
そんな時、「おーぃ!おーぃ!」
手を振りながら、小汚いお遍路がやって来る。
なんと!徳島の栄タクシーで一緒になったあの乞食お遍路さんだった!
「はえーなー!俺自転車でまわってるのになんで、お兄ちゃんが先なの?」
「えーっ?ホントに回ってんのー?」
「ちゃんと回ってますよ!」
失礼極まりない。
「今日どーすんの?」
「いやぁ正直考え中です。もう少し進もうかと。」
「今日はさー、久しぶりに逢ったんだから、一緒にとまろうよー」
人なつっこい歯の無い笑顔に「まぁ許すとするか・・・」
「分かりました。今日はここで寝ましょう」
そうと決まれば、東屋で2つテントを並べると狭い。
向こう側に自転車置き場があった。屋根がついている。
「ここにしましょう」
掃き掃除をし、テント設営。
「お兄ちゃんご飯は?」
「さっきのうどん屋さんでたべました」
「金持ちだねぇ!」
「そんなことないですよー」
「俺なんか、店に入って飯なんかここ1年ないぞ!」
ガスバーナーを取り出した。
自転車遍路は家財道具一式揃っている。
「今日は夕食なんですか?」
「ラーメン」
この人は、ここからが笑わせる。
取り出した袋ラーメンはなんと3個
「嘘でしょう?」
「いやぁこのぐらい食べれるよ」
鍋にお湯が沸いてきた。一気に放り込む。
その次に取り出したのが、たまご1パック。
「今日さー、スーパーで買い物してたら1000円以上買い物したら
たまご1パック1円って書いてあったから、1000円も遣っちゃった」
たまごを割って入れている。
1個、2個、3個、4個・・・「えっ!」
なんとこの御仁はたまご10個全部入れた!
スープを入れ、ひたすらかき回している。
「できた!」
鍋のまま食べ始める。
麺もどんどん口に運ぶ。たまごは半煮えのまま飲み込むだけ。
「いやぁー食えねえゃ!」
「でしょう!」
「お兄ちゃん食べる?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・いえ;」
「だよねぇ」
「そう言えば、この公園、コイがいたなぁ。コイが食わねぇかなぁ」
「止めた方がいいと思います」
しかし、言うことを聞かない。
池の中に残ったラーメンたまごをそのまま入れる。
「やっぱ食わねぇなぁ」
ラーメンを食っているコイは見たことがない。
池にラーメンが浮いているではないか!
こんな事して汚すから、一部のお遍路の為に、歩き遍路全部が
悪くおもわれる。27番下の唐浜駅がいい例だ。
野宿禁止になれば、困るお遍路さんは大勢いる。
ちょっとむかつく。
夕食が無事?終わった頃、僕が途中追い越したおじいちゃんが
公園に辿りついてきた。
何と、相棒?の乞食遍路と話している。顔見知りのようだ。
おじいちゃんは僕達に気を遣い、向こうの東屋へ腰をおろした。
陽も暮れ、こちらは「もう止めましょうよ!」
「いいじゃあないの!」とさっきの調子で掛け問答して、じゃれて遊んでいた。
おじいちゃんを仲間に加えない分けでもないが、2人のペースで話ていると
さすが、淋しくなったのかこちらに近ずいて来た。
3人で話をすることにした。
おじいちゃんの話を聞くと「東京から来て3年。現在83歳」
昔の職業は僧侶だった。
場所は、松山で天台宗「大行院」の長男として生まれる。
小学校に上がるころには、般若心経は唱えていた。
しかし、ここ四国では88ヶ所のお寺は大富豪。
お遍路コースに入っていないお寺は貧乏との事。
確かに、お寺と言えどもお金がなければ食っていけない。
88ヶ所に指定されている。お寺は、納経だけで年間収入1億円だ。
納経は一人300円。年間約30万人が訪れるからだ。
しかも無税。・・・確かに。ここお遍路に来てみると分かるが、悪い噂は
後を絶たない。どこどこの住職は、夜な夜なかつらを被り、飲み屋街に
出没して、愛人を囲っている・・・等々。
おじいちゃんもその話を知っているみたいだった。
今の仏教界を嘆いていた。
おじいちゃんの生まれた大行院はその後3人住職が変わったが、食っていけず
今お寺は、潰れているとの事。
僧侶を辞めてからは、西国33箇所巡りや色んな所を巡礼していると。
今回は、夢の中で四国遍路連続10回巡る夢を見たから来たと。
連続10週である。
正に静かな鉄人である。頭が下がる。
今8週目でここまで3年かかったと言う。
「この荷物20キロ以上あるのではないですか?」
「多分・・・」
僕は天を見上げた。
「ひとつ質問してよろしいですか?」
うなずく。
「回っていて、お大師さまに質問されることがあると思うのですが、その時
お大師さまはちゃんと返事を返してくださいますか?」
ゆっくりとうなずいた。
「やはり」
夜も更けてそれぞれテントに収まる。
おじいちゃんはテントを持っていなかった。
真冬でもシェラフだけでの野宿のようだ。
・・・今日は大切なものを見つけた。
本日 32キロ
40番 観自在寺(かんじざいじ) ご詠歌
しんがんや、じざいの春に、花さきて うき世のがれて、すむやけだもの
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